一周忌の法事を終えたその夜、尚太郎の気持ちは固まった。
法事の席で叔父たちは自分のことを
「三代目」「頼むぞ三代目」「オヤジを越すんだぞ」と言った。

イヤだった。
この小さな町であの父親の配下で生きていくことは耐えられない。高校卒業まで残り一ヶ月だ…。
逃げるなら今しかない。家出の支度をはじめた。時計を見ると午前四時四十分だった。父親の朝は早い。その前に…。
三歳年下の弟と四月に小学六年生になる妹には申し訳ないと思ったが、尚太郎は生まれ育った家から逃げた。

令和2年5月6日