11.さよなら父さん 8話

 唇から流れる血を拭いながら尚太郎は考えていた。

 言葉にしたことで、それまでモヤっとしていた気持ちが晴れた…そうなんだ…オレはこの家を継ぎたくない、オレにはオレの人 生があるんだ。

           

好きなことをやって生きていきたいんだ。

                 

「 好きなことってなに ? 」 。ある日、母親にそう聞かれたきに、答えられなかった。

 だから・・・母親のために稼業を継ぐことが自分の人生だと思 い込むようにした。

                 

 その四ヵ月後、母親はこの世を去った。

 前の晩まで普通に話をしていたのに・・・

 あっけないほどあっさ りと天国に旅立った。脳の病気だった。

人は突然、人生を終えちゃうんだ・・・。 

尚太郎は喉が枯れるまで泣いた。

【つづく】

令和2年5月11日