唇から流れる血を拭いながら尚太郎は考えていた。
言葉にしたことで、それまでモヤっとしていた気持ちが晴れた…そうなんだ…オレはこの家を継ぎたくない、オレにはオレの人 生があるんだ。
好きなことをやって生きていきたいんだ。
「 好きなことってなに ? 」 。ある日、母親にそう聞かれたきに、答えられなかった。
だから・・・母親のために稼業を継ぐことが自分の人生だと思 い込むようにした。
その四ヵ月後、母親はこの世を去った。
前の晩まで普通に話をしていたのに・・・
あっけないほどあっさ りと天国に旅立った。脳の病気だった。
人は突然、人生を終えちゃうんだ・・・。
尚太郎は喉が枯れるまで泣いた。
令和2年5月11日