47.明日はそこにあるはず 16話

 舞台は抱腹絶倒の連続だった。

 これでもか、さらにこれでもかと笑いのウェーブが起こる。

板の上の涼風とアクア九条の台詞の応酬は絶妙で、稽古にはなかったアドリブが二往復した。それ以上やるとしつこいと思わせる手前で台詞へと戻り、客にはそれが台本なのかアドリブなのかはわからない流れだ。同じ板に立ちながら(オレ、すげえ現場にいるんだ…)と才蔵は思っていた。

 ラストシーンに向かってのタップシーン。そこでも涼風とアクア九条は本場の踏みしめを見せてくれた。そこに座長の三四郎が加わり三人のタップは圧巻だった。

         

 そしてタップのくだりからエンディングは、モーニング娘。の楽曲の中で最も激しいダンスとファンの間で言われている「ここにいるぜぇ!」を出演者全員で踊るのだが、ここでも才蔵は驚かされる。カーテンコールでもないのに芝居中にお客さん全員が立ち上がって一緒に踊り出す舞台の破壊力もそうだが、なによりも涼風の体力だ。全身全霊、全力で客席を楽しませているのだ。朝方まで酒を飲み、そして電話をし続けていた涼風の体力はどうなっているのだろ…。

 なにがこの人を支えているのだろうか、そんなことが気になった。

【つづく】

令和2年6月16日