82.雨のち晴れ 19話

 階段を降りてきた尚太郎が、その二人に気づいた。

 改札付近に佇みながら頭上の電子掲示板を見上げてる二人の女性はギターケースを肩に担いだよしえとOL姿のサチ子だった。

「あ〜間に合わなかった」

「会いたかったなー奈緒美に。ウチの会社の会議、長すぎるんだよねー。てか、奈緒美から東京にいるよって電話もらったのは夕方だよ、急すぎだよ」とサチ子はボヤいている。

「どうも…」

 声をかけた尚太郎をサチ子とよしえが見つめた。

 尚太郎にとって気まずい再会だった。あの日の醜態を見せたことで会うことを避けてきたので恥ずかしさと気まずい気持ちが入り混じっている。

 声の主の尚太郎を見たサチ子が「なんで尚太郎くんが奈緒美を独占してるのか意味がわかりませーん」と軽口を叩いたことで、そのわだかまりを一瞬に消してくれた。

二人の女性たちは口々に「バーカ」「単細胞」「弱虫」「スネ男」「寂しがり屋」「かまってほしいコ」と思いつくままの単語を面白そうに尚太郎に向けて喜んだ。

【つづく】

令和2年7月21日