涼風とアクア九条の姿を見つけたアロハは呆れるような呟き。
「六本木のど真ん中でオカマが喧嘩してます」
「バカ。そういうことを言うな、ウチの幹部だぞ」、才蔵がアロハの頭をコツンとやったそのときだった。ガッキーが車道へと走り出したのだ。我が身の危険を顧みず、行き交う車の隙間を抜けて反対側の歩道へと走っている。
情報屋ガッキーの動きを見ていた才蔵とアロハは呟いた。
「すげえな…忍者みたいだな」
「そうすか?オレには噂好きの団地のおじちゃんにしか見えないんですけど」
「アロハさ、おまえってそんなヤツだったの?人の悪口は言わないと思ってたよ」
「あ〜。スミマセン、猫かぶってました(笑)。今日のボラ事件で才蔵さんとこうなったことで、なんつーかすげぇラクになりました」
「それならそれで良いや。人間、ストレスが一番の天敵だからな、ラクに生きろ、ハハハ」
「それにしても、あの二人、なにを言い争いしてるんですかね?やっぱ今日の帰りがけに揉めてたチケットのことなんですかね?」
「だろうな」
「あれ?気にならないんですか?」
「ま、気にならないことはないけど、気にしちゃうと、オレ、変な方向に頑張っちゃうだろ…。だから気にしないようにするよ」
「本当ですか〜」。アロハが悪い笑顔を見せる。「本当に我慢できるんですか〜才蔵デカさん」
「よ、よしてくれよ、その呼び方は。お父しゃんのDNAが疼くんだよ」
才蔵の目がキランと光る。
「おお〜キタキタキタァー」
「う、疼かせるなよー」
「くるよくるよ、きちゃうよー才蔵デカがー」
「じゃあーいっちゃいますかー」
令和2年8月1日