102.雨のち晴れ 最終話

 九字護身法を三四郎が唱え終わったときだった…。

                            

 月夜が三人を照らし、スッと伸びてきた一筋の光が三人を包みこんだ。それは神秘的な光だった。光に包まれた才蔵、アロハ、ガッキーは、突然睡魔に襲われ、一人がガクンと寝落ちし、続いて二人三人と眠りに落ちていく。三人は不思議なくらいに体が軽くなり、幼き頃母親に抱かれていたときの安らぎを感じ、ポカポカ、ポカポカ、身体の芯から幸せを感じていった。

                

                            

                            

                            

 朝日に包まれながら公園で目を覚ました三人だったが、どれだけの時間が経過しようが…現実を受け止めることが出来ず、言葉を失い、その場から動けないでいた。

             

 その場所は眠ってしまった公園と思われるが、どこかが違う。周囲を見渡すと全ての風景が古いのだ。

               

 それはそうだ。ここは昭和なのだ。

                            

                            

「どこなんですか、ここは…?」、才蔵が目の前の男たちに聞いた。

           

「誰なんですか、あなたたちは?」、ガッキーが目の前の男たちに聞いた。

             

「人形が喋りましたよね…」、アロハが目の前の人形に話しかけている。

         

 脅える三人を見つめてるのは尚太郎。そして奥平、慎一、北別府、浩輔、謎の住人。

            

             

 涼風は走っていた。

             

               

 狂ったように叫びながら走ってる。

                

「冗談じゃないわよ、どーしてあいつら三人がこの物語の終わりになってるのよーこれはねー私の物語なのよ!『涼風せいらのOKオケケ』なのっ、わかってんのっ!私のお話で終わらせなさいよーこんなんで終わっていいわけないじゃないのさー。大体ねー102話で終わるってなんなのよー中途半端すぎるわよー」

                 

 涼風は誰に叫んでいるのか、とにかく走ってる。

          

「ムチャクチャじゃないのさー何で今と昭和がごちゃごちゃになってるのよー今の時代の話に戻しなさいよー」

               

 そのとき、ドラマでよくありがちなシュチュエーションが起こった。車道を横切ろうとした涼風の目の前に激しいクラクションを鳴らしながら迫ってくる車が・・・。

           

 涼風の頭の中にアクア九条に自慢をした「百日後に死ぬゾウ」の言葉がフラッシュバックした。

                 

                

「死ぬの?私、ここで死ぬの?嘘でしょ、最悪な最終回じゃないのさ、いやだあぁぁぁー」

   

 涼風の脳裏に走馬灯のように思い出が駆け巡った。

            

         

「お父さぁぁぁぁーん助けてぇぇー」

              

          

 涼風は父親に助けを求めるように泣き叫んだ。あの日、十代の頃、忌み嫌った父親に、今、死を目の前にした、そのとき、涼風は助けを求めた。

           

 猛スピードと思ってた車は安全運転すぎるほど安全運転をしていてゆっくりとスーッと停車をし、窓から顔を出したドライバーが「おばちゃん、危ないよ。横断歩道が青になったら歩くんだよ」と優しく注意をして走り去った。

          

 安堵の息ついた涼風は天に向かって叫んだ。

       

「あたしの物語ぃぃぃぃ返してよぉぉぉぉ〜。ねえ〜素直になるからさ〜90話からやり直しをさせてよー」

      

【おしまい】

令和2年8月10日