「バイバイ、オレのチェーリー」
東京に遊びに行く前の日、風呂に浸かりながら尚太郎は興奮をしていた。
待ち合わせ場所の原宿竹下通り改札口にいた奈緒美と呼ばれた女性は美大生で見るからにハイセンスな東京の女だった。
この人と…。尚太郎は興奮した。
「時間がギリギリなの。行こ」。奈緒美が歩き出した。
尚太郎は奈緒美の後を追った。
連れて行かれた場所は『WORK SHOP』という名前の劇場だった。
「な、なんですか、ここ?」
「劇場。東京キッドブラザーズ、知らない?彼らが作った劇場なの、行くよ」
「いや、あの、劇場でするんですか?」。
尚太郎はわけも わからず爆発寸前の股間を押さえながらついていった。
圧巻だった。
「ペルーの野球」という芝居は手を伸ばせば届きそうなステージで、汗をかきながら咆哮する役者たちが美しかった。看板役者の柴田恭兵がキラキラとしていた。
余談だが、このとき尚太郎の斜め後ろの席に座っていた男・水谷あつしはこの二年後に東京キッドブラザーズの研究生となる。
令和2年5月9日