尚太郎は食い入るようにステージを見つめた。
そして芝居の美しさに惚れた。
(落ち込んでる後輩がいるんで元気づけて欲しい)。
全ては武雄の計らいだったことを観劇後、奈緒美から聞いた。
武雄さんに感謝だ。
母親は尚太郎の話を楽しそうに聞いてくれたが父親は親に内緒で東京に遊びに行った息子を殴った。
「おまえはどこまで心配させれば気がすむんだ。そんなことで三代目を継げるのか」
「勝手に決めないでくれよ、継ぐなんて誰が言った」
売り言葉に買い言葉だった。
再び平手打ちを喰らった。
令和2年5月10日