最近流行りのワンルームマンションが奥平の部屋だった。
鉄扉で閉ざされた玄関横には三畳ほどのキッチンがあり、そこの背面の扉奥には洋式のトイレと風呂が収納されたユニットバスが備えられ、六畳ほどの広さの部屋にはベッドと最新式のテレビとVHSのビデオデッキが揃っていた。
武雄とは真反対の金持ち学生の部屋だった。
家賃も家電も全て親に甘えていると奥平は言った。
「だってよ、わしゃ自分の夢を持てることのう家業を継いじゃるんじゃけぇさ、じゃけぇ甘えられるうちは甘えるって決めたんじゃ。わしゃ田舎のボンボンさ」
自虐的に笑った奥平がポツリと呟いた。
「夢を語れる奈緒美さんたちがとてつものう羨ましいんじゃ」
そして尚太郎に言った。
「尚太郎、好きなだけここにおってええけぇな。われも夢をつかまえろよ」
令和2年5月26日