惨めだった。
悔しかった。
帰宅した尚太郎を奥平が大変心配した。
鼻が折れているかもしれないので病院に行こうと言ってくれたが、保険証がありませんと言うと奥平は保険証を貸してくれた。
投影盤に写ったレントゲン写真を見た医者が
「奥平さん良かったね、折れてませんよ。だけど安静にしておかないと鼻が曲がったままになるよ」、と忠告をした。
奥平の連絡を受けて武雄や奈緒美たちが奥平の部屋に駆けつけてくれたが、その夜は鼻骨の痛みで会話することもできなかった。痛みと悔しさで涙がこぼれた。
犯人はあいつらだ。大学生のバイトの二人。職人たちの目を盗んでサボってばかりいるあの二人だ。顔をなぐられ、鼻を押さえた指の隙間から逃げていく二人の背中に見覚えがあった。小太りとひょろ長の男、あいつらだ。そして何よりも動かない証拠は顔を覆われたこの手ぬぐいだ、小太りの男があの日、首に巻いてた。
絶対に許せない。
令和2年5月29日