「答えろよ、才蔵」
「僕は…えっと…涼風さんの気力と体力がすごいなーっていうか…羨ましいというか、どうやったら追いつけるのかなって、そんな気持ちで見ていただけで…。え〜?調べるって、なんでしょうか?」
才蔵は言葉を並べて必死に取り繕ったがランランの目はその言葉を素直に受けて入れていないことをわかっていた。理由は、自分の表情に余裕の笑みを浮かべることも出来ずに強張っていたからだ。
才蔵は考えていた。次になにかを言われたら、そのときは、ガハハと笑ってバカなふりをして「すみませーん」と誤魔化そうと決めていた。
ランランがなにかを言いかけたとき、「ランランさーん、ちょっといいですかー」と制作スタッフが階段を降りながら声をかけた。「夜の回のランランさん扱いのお客さんチケットのことでよろしいですかー」「はーい、今行きまーす」と言葉を返したランランは才蔵を見て低く囁いた。
「いいか、涼風さんの秘密には触れるな」
通路にひとり残った才蔵は確信をした。
秘密だと…?
涼風とランランは「やってる」。
あの二人は同じ穴のムジナだったんだ…。
告発してやる。
才蔵の正義は熱くたぎりはじめていた。
子どもの頃に夢中になった刑事漫画のセリフがフト頭の中を走った。
「捕まえなければならない奴は捕まえるんだ!」。
えーっと、なんという漫画だっけ…?
あ、思い出した、本宮ひろ志の「俺の空 刑事編」だ、安田一平の決め台詞だ。
令和2年6月20日