「才蔵、なにをしてるんだ」、と声を荒げたのはランランだった。
「それは涼風さんの小道具だ、返すんだ」
「そうよ、返して、ね、返してよ」
両手を合わせて懇願する涼風を見つめていた才蔵は、覚悟を決めた。
「この中になにが入ってるんですか?」
涼風の顔が、は、と強張った。
ランランが間髪入れずに怒鳴った。
「ばかやろ、そんなことおまえに関係ねえだろ」
「関係なくはない」
鬼気迫る才蔵の言葉に一同が何ごとかと才蔵を見つめ、ランランは言葉を継げなくなった。
「涼風さん、俺は不思議だったんです、あなたのパワーはどこからきてるのかって。凄いよ、ハンパないよ、異常だよって、でもその原因がわかったんです、クスリだ、ヤクブツを使って、元気になってて、そんなんでいいんですか!」
ヤクブツという言葉に周りの者たちがザワッとなった。
涼風の表情がヌルっと崩れ落ちていくのがわかった。
「だって仕方がないじゃない、それがないと私、ダメなんだもん、お願い、返して」。
涼風の頬に涙が伝った。
認めた…。
この人、今、認めた…。
涙を浮かべて許しを乞うてる…。
ランランが優しく声をかけた。
「才蔵、わかってやってくれ。涼風さん…そのクスリがなきゃダメなんだよ、な」
「ふざけないでくださいよ! 俺はそんなことは許さない、どんな理由があっても許しません、涼風さん情けないですよ、なんでこんなものに頼って生きてるんですか」
腑に落ちない言い訳を聞かされた才蔵は悲しくなり、そして声を荒げた。
「ランランさん、あなたもやってるんだろ」
「え…?」
突然の詰問にランランは戸惑った。
「ま、待ってくれよ、俺はそんなものに手はだしてないって、オイ、ちょっと、信じてくれよ」
才蔵はしらを切ろうとするランランの姿が憎かった。
「あなたたちのやってることは不正だ」
令和2 年6月26日