六本木の小さなバーのカウンターで三四郎とランランが涼風の話を聞いている。
「奈緒美さんは、いつも私にエネルギーをくれた人だったの。とっても優しい人、自分に厳しくて、人に優しい…そういう人なの…」
グラスの中でゆっくりと溶けていく氷とバーボンを涼風は見つめていた。
三四郎が優しい瞳を涼風に向けた。
「その人、涼風ママの恩人なんですね」
「そう、大恩人。あの人がいなかったら今の私はいないと思う。奈緒美さんがいてくれたから頑張れたの、あれからものすごーく頑張れたの」
「僕、その人と会ってみたいです」
「私も会ってほしい。多分ね、頑張り屋の三四郎と、ものすごーく気が合うと思うの」
「うわあー楽しみです」
破顔の三四郎を見て、涼風も嬉しくなった。なんて無邪気で可愛いコなの、私の大恩人の奈緒美さんの話にこんなに喜んでくれているなんて…
あゝホントにいいコ、素直なコ、食べちゃいたいなー
と心の中で思いながら、綺麗に整った三四郎の顔を眺めていると、その視界にブスリとした目で自分を見ているランランの顔に気がついた。
「ランラン、なんなの? そのブサイクな顔は?」
令和2年7月23日