「あら、そうだったの。あの改札にいたコ、おニャン子のコだったのね、サインもらっておけばよかったわー。今持ってればメリカリで売れたわね、ガーハハハ」
「ママ、メルカリです」三四郎が訂正をした。
「あらヤダ、惜しかったわねーホホホ」
「そんな話じゃない!」
ランランがテーブルを叩いた。

「なんなのよ、怖いわねー」
「あのとき、オレがどんな思いで高井麻巳子のためにショートケーキを買ったかわかりますか?渡せたときの一瞬の笑顔を楽しみにしていたオレの青春を…だけどそれを渡せなかったオレがどんな気持ちであの夜を過ごしたかわかりますか!」
「わかるわけないじゃないのさ、今頃グチグチと、面倒臭いオトコねー」
「謝ってください」
「はい?」
「あのときのことを今、ゴメンねって謝ってください。ぶつかってゴメンね、ショートケーキ落とさせちゃってゴメンね、麻巳子からの微笑みを奪ってしまってゴメンねって謝ってください」。唾を飛ばしながら激高するランランに呆れた涼風は「馬鹿馬鹿しい」、と言うと「ツバ飛ばすんじゃないわよ、コロナこれから来るのよ」と叱った。

令和2年7月26日