才蔵デカは部下のアロハを鋭い眼光で見つめながら話しかけた。
「アロハ。つまりは、どういうことだ。おまえの推理、見立てを教えてくれ」
部下のアロハは涼風とアクアの言い争いの原因を声を潜めながら分析した。
「オレが思うに、あの二人、ブツの取り分のことで言い争ってんじゃないかと」
「ブツだと! ボラじゃないのか?」
「シャブダチだと?」
「間違いありません」
アロハは強い眼差しを才蔵に向けた。その真剣な瞳を見つめてた才蔵はアロハに顔を近づけて低く囁いた。
「アロハ」
「なんですか」
「二度とその手には乗らない」
強く握った拳でアロハの頭を強めにコツンとやった。
反対側の歩道では涼風とアクア九条の言い合いが続いている。だが道ゆく人たちは誰一人として、この二人に興味はなく地下鉄への急ぎ足だ。その雑踏の中で気配を消しながら情報集めに夢中になっているのはガッキーだった。二人の会話を聞き取ろうと必死だ。この内容をキャッチすることで明日からの楽屋での人気者が保証されるのだ。
情報屋ガッキーとして必死になるのは当然のことである。
弾む心を抑えながら会話を盗み聞いてたガッキーの顔色が、フト徐々に青ざめていく。なにやら、とんでもない情報を仕入れてしまったようだ。ガッキーは口の中で小さく…。
「ひゃく? ひゃくって…」
ガッキーは謎の言葉を呟いた。
令和2年8月2日